友人の死♪

tatsu06012016-12-29

これをしたといえるものはない。
こんなふうに生きちゃいけなかった。



きみはそういって、静かに笑った。
怒りを表にあらわすことをしなかった。



静かな微笑は、けれども、
きみの怒りの表現だったとおもう。


きみが叫ぶのを聞いたことがない。
慎ましさが、きみの悪徳だった。




癒すすべのない病に襲われても
慎ましさを、頑としてまもった。



蝶を愛し、ジャズを愛し、
話すときは、まっすぐ目をみて話した。



何一つ、後に遺すことをしなかった、
心の酸のような、微笑のほかは。



「人間は、一つの死体をかついでいる小さな魂にすぎない」





さよなら、きみのことを
ほんとうは何も知らなかった。











長田弘